ページターナー
東京の喧騒から離れた場所に、ナツキの小さなアパートがあった。ここは彼にとって、読書の世界への入り口だった。彼の部屋には、本棚が壁一面に並んでいて、彼が愛する作家たちの作品がぎっしりと詰まっていた。カフカ、村上春樹、夏目漱石……。彼は彼らの言葉に魅了され、彼らの物語に没頭していた。
しかし、ある日、彼は読書に飽きてしまったことに気づいた。いつも同じ作家、同じジャンルの本ばかり読んでいると、新鮮味がなくなってしまう。彼は新しい何かを求めていた。新しい風景、新しい言葉、新しい感情…。彼は自分がまだ知らない世界に触れたかったのだ。
そんなある雨の午後、ナツキは街を歩いていた。ふと目に入ったのは、小さな古書店のショーウィンドウだった。そこには、「ページターナー」という文字が書かれたチラシが貼ってあった。「ページターナー」は、個人の読書嗜好に合わせて、新しい本を提案してくれるというサービスだった。ナツキは興味を持ち、古書店に入っていった。
店内には、古びた本が山積みになっていた。ナツキは店主に声をかけた。「ページターナーというサービスを試してみたいのですが……」店主は笑顔で応えた。「ああ、それならこちらの端末で登録してください。あなたの読書歴や好みを入力すると、あなたにぴったりの本を選んでくれますよ」ナツキは端末に向かって、自分の情報を打ち込んだ。すると、端末はすぐに一冊の本のタイトルと著者名を表示した。「時間の渦巻き」という本だった。
ナツキはその本を探してみたが、店内には見当たらなかった。店主に尋ねると、「ああ、それは今日入荷したばかりの本なんです。まだ棚に並んでいないんですよ。こちらにあります」と言って、店の奥から一冊の本を持ってきた。ナツキはその本を手に取った。表紙には、時計の針が渦を巻いているようなデザインが描かれていた。その本は、時間と空間を超えた不思議な冒険を描いているということだった。
ナツキはその本に惹かれた。これは自分が求めていた新しい何かなのではないかと思った。彼はその本を手に自分のアパートに帰った。窓辺の椅子に座って、本を開いた。すると、彼の周囲の空気が変わっていくのを感じた。雨音が消えて、代わりに時計の音が聞こえてきた。彼は本の中に引き込まれていった。
本の中では、主人公が時空を超える旅に出ていた。古代の遺跡、未来の都市、異世界の国…。主人公は様々な場所を訪れ、様々な人物と出会い、様々な事件に巻き込まれていった。ナツキは主人公と同じ目線で、その物語を体験した。彼は自分がまだ知らなかった世界に触れ、自分がまだ感じたことのない感情に揺さぶられた。
ナツキは本を読み終えたとき、自分が新しい自分になっていることに気づいた。彼は本を閉じて、深い満足感を感じた。これが読書の魔法なのだと思った。彼は再び古書店に行き、店主に感謝の言葉を述べた。「ページターナーというサービスはすごいですね。私はこの本に出会えて本当に良かったです」店主はのれんの奥からコーヒー片手に現れ嬉しそうに笑った。「それは良かったです。では、次はどんな本がいいですか?ページターナーはまだまだあなたに合った本を提案してくれますよ」ナツキは期待に胸を膨らませた。「では、次は……」