トラジの教えてくれた「冒険者たち ガンバと15匹の仲間たち」|出会った小説:『冒険者たち ガンバと15匹の仲間たち
その頃、私は小学校から友人トラジと一緒に帰っていた。トラジは勉強ができるが、そのせいなのか少し大人びた話をするジジイ臭い小学生だった。私はその頃、アニメの「ガンバの冒険」に夢中になっていた。毎週の放送時間になるとテレビに噛り付いて観た。アニメ「ガンバの冒険」の壮絶な最終話に私の幼い心は大きく揺すぶらされた。人生で初めて不条理と言う言葉の意味が分かったような気がした。
ある日の下校時、私はこのアニメ「ガンバの冒険」に感動をした話をトラジにした。するとトラジは鼻の穴を膨らませて私に向かって言い放った。「お前は未だテレビアニメなんぞに感動しとるのか? オレはその原作本を持っとるぞ」私は反射的に叫んだ。「マジか! 読みたい! トラジ貸してくれ!」トラジはタダでさえジジイ臭い顔に深い皺を加えてニヤリと笑って言い放った。「しょうがないの~。じゃあ明日持ってきてやる」
私は「こいつは本当に俺と同じ歳なのか?」と心で思ったが、顔には出さず「サンキュー!」と万歳をする事でトラジに喜びを伝えた。
翌日の下校時にトラジはニヤニヤと笑みを浮かべながら「大事に読めよ」とランドセルからその本を出してきた。その夜、私は初めて小説の一気読みをした。読み始めたら止められないほどワクワク、ドキドキの連続だった。テレビアニメの「ガンバの冒険」も衝撃だったが原作本も私の幼心にザックリと深い傷を残した。それが切っ掛けだったのか、その後、小学校で私とトラジは二人で 雑誌を作った。二人で手分けしてなんかの物語を数編書いて自分達で製本して誰にも見せる事も無く二人で読んだ。
そして三十数年の年月が流れSNSでつながった小学生時代の同級生達と同級会をした。そこにはトラジは居なかった。近所に住んでいた同級生がトラジは早世したと教えてくれた。トラジは有名大学を卒業して教職に就くも二十代の若さでこの世を去ったとの事だった。私は同窓会の帰りに偶々あった本屋に寄って「冒険者たち ガンバと15匹の仲間たち」を探した。自力では見つけられなかったが書店員さんに訊くと探し出してくれた。私はそれを買って家に帰った。居間で「ハンターハンター」を読み耽る息子にその本を渡した。「お父さんが小学生の時に感動した本だよ。面白いから読んでみて」
数日後に息子の部屋を「そー」と覗くと彼の愛読書「ハンターハンター」に並んでその本は棚に並んでいた。その本は息子の柔らかい心にも何かを刻み込んだようだ。私は天を仰ぎその事をトラジに伝えた。