予期せぬ衝撃
本との出会い方のバリエーションは昔に比べると少なくなった気がする。自分の場合、図書館、本屋で作家名もしくはタイトルやあらすじで気になったものを手に取るというのが大半である。たまに他人からお勧めされた本、という場合もあるが、お互い普段から本を読む人である、という認識を持った上での紹介なので、説明の仕方にそこまでバリエーションはなく、出会い自体が印象に残ることは少ない。そもそも自分の中で読書という行為がパターン化しているようにも思う。手に取った本を読んで、面白かった点、よくわからなかった点、印象に残った一文、以前に読んだあの本に内容が似ている、読後感はあの本に似ている、と一通りの感想を抱き、図書館に返却、もしくは本棚に収納する。特別面白ければ誰かに紹介することもある。本に飽きることはない。むしろ読書経験を重ねるにつれてどんなにつまらない本でも面白い点を見出すことができるようになってきた。しかし、読書という行為自体には真新しさがなくなってきているのである。こんなことを考えながら自分の読書遍歴を遡っていくと、印象的な出会い方をした本というのはまだ読書の習慣が根付いていないころに多くあったように思う。
高校生の頃、部活の同級生が前触れなくある一冊の文庫本を渡してきた。「この本読んでみて。爽やかな恋愛小説だから。」と。ブックカバーがかけられており、めくって扉を確認するとタイトルは『告白』とある。それまでその同級生と本の話などしたこともなかったが、当時はあまり人から本を紹介してもらう経験がなく、嬉しかったのを覚えている。恋愛小説、と最初に言われたし、ブックカバーを外して裏表紙を確認するのも面倒だったので、特にあらすじを読むこともなく本文を読み始めたのだが……。
ご存じの方も多いだろうが、ベストセラーとなり映画化もされたこの本は読後感の悪いミステリー小説「イヤミス」の代表格である。そんなことは全く予測していなかったので、非常に衝撃が大きい読書となった。そういえば渡してきた時の同級生はにやにやしていた気もする。その後本格的に読書をするようになって衝撃度の高いミステリーはたくさん読んだし、自分の価値観に影響を与えた本も一つや二つではないが、読書体験としてこの時を超えることはないかもしれない。自分もこのような本の薦め方をしてみたいのだが、タイトルと内容が異なり、かつ内容の衝撃が強い本を用意する、あらすじを読ませないように誘導できるシチュエーション、等の条件を揃えるのが意外と難しく、実現できていない。
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