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本とコーヒーの誘惑

本とコーヒーの誘惑

どん‐き【鈍器】

凶器となりうる、こん棒・れんがなどのような、固くて重みのあるもの。「―で頭を殴打される」

文学界の鈍器製造機といえば、言わずもがな京極夏彦先生ではないでしょうか。凶器とまではいかないにしても、手首の殺傷能力には定評があります(笑)。読書歴ン十年の私は、この年(もちろん想像にお任せする)になるまで京極先生の鈍器とは無縁の人生でした。そんな私の手首が、鈍器の洗礼を受けるに至った経緯をお話します。

本好きがアタリの本に出逢う方法とは? 書店の平積みや書籍の帯、数あるランキングに踊らされ、インターネットの検索バーに「好みのジャンル おすすめ」を検索してはアタリハズレを繰り返す。

もう限界ではないか。もっと斬新な本との出逢い方はないのかと、検索バーに入力しようとする手を、はたと止める。現代人の悲しい習性、手元にある四角い端末がいけないのだ。得体のしれない仮想空間に何がわかる。大好きな警察小説の現場百篇にならって私は自分の足で探しに行くことにした。春の陽気に誘われて、たどり着いた先は『RENS 本とコーヒー』の立て看板。本とコーヒー……人ひとり通れるくらいのスペースの階段を二階までのぼり、扉の窓ガラスから覗く先には本棚! 扉を開けて足を踏み入れると、壁一面の本棚! 部屋の中央には木製の調度品、窓にはブラインド。惜しい。入口の扉が重い木製の窓無しで、ライオンのドアノッカー付きであれば完璧なのに。それ以外はイギリスに在る探偵事務所そのものだ。と言ってもイギリスに行ったこともない私の脳内が作り上げた「小説の中に出てくるイギリスの探偵事務所はこんな感じ」なのだけれど。ほんとうに扉以外はそれなのだ。珈琲の香りが嗅覚に訴えかけてくるところも、ここはイギリスの探偵事務所。

  のちにそんな似非(こら)イギリスの探偵事務所『RENS』で開催される読書会に私は参加することになり、己の読書人生で食指が動くことのなかった、京極先生の「姑獲鳥の夏」と出逢うことになる。

レンズ【RENS】

大阪北摂、箕面にある小さな読書空間


出会った小説:『姑獲鳥の夏』

著者:京極 夏彦